家庭はよく港に例えられる。
海で溺れかけた小舟が港に帰ってきた。
小船は傷付き もう浮かばない。
港に帰ってきて ドックに入る。
メンテナンスには時間がかかりそうだ。
船の小さな呟きを拾わないと
どこから手をつけたらいいのか分からない。
あの嵐は大変だったんだ
息も絶え絶えに帰ってきたんだ
溺れかけたから、海が怖くなったんだ
耳をすませたら、そんな呟きが聞こえてくるだろう
毎日出港していく他の船を見て、
傷ついた小船は 早く漕ぎ出さなくちゃと 焦る。
毎日船を送り出す隣の港を見て、
ここに留まらせておいて大丈夫なんだろうかと
不安に駆られる港もある。
いつまでも漕ぎ出せない小船にため息をつきながら
あえて同じ港から出て行く船もあるだろう。
まだまだメンテナンスが終わってないだけなのに。
でも、ここに、のんびりくつろぐ客船がいたらどうだろうか。
小船はちょっと安心して
もうちょっと治るまで
大丈夫になるまで
傷んだトコロを直せるだろう。
港は 家庭。おうち。
客船は 母。または、父、祖父母。
客船は、港は、
そこに居るだけで、
何もしなくても、一緒に居るだけで、重要な任務を果たしている。
海はどんな波がくるか分からない。
また大波がくるかもしれない。
海が怖くなったのだとしたら
一度溺れかけたのだとしたら
まだ船底に穴が開いているのだとしたら
もう少し
もう少し
丁寧に、時間をかければいい。
そして、漕ぎ出す海も
波の特徴を良く見て、
漕ぎ出したい海を選べばいい。
港で充分に休んで、メンテナンスが終わったら
小船は、客船に手を振って
また、漕ぎ出していくだろう。
nao